柔道は日本発祥のスポーツですが、世界中に広まり、世界選手権やオリンピックでは、たくさんの日本人選手がメダルを獲得しています。今や204か国(令和2年度)が国際柔道連盟に加盟し、国際ルールのもと、日本人選手は世界の舞台で試合をしています。そして、すべてのプレイヤーが共通ルールのもとで競技できるよう、公平な競争条件を定めることを“Level Playing Field”といいます。
“Level Playing Field”は、フェアプレイの精神を好む欧米で発祥しましたが、スポーツだけでなく、ビジネスの世界でも根底にある概念です。
たとえば、国境を越えて企業が競争する時、これまでの課税は各国が自主的に定めた税法に委ねられ、二国間の調整を租税条約で行うローカルな運用でした。そのため、オンライン広告サービスや音楽配信サービスの提供などが世界中に展開されるようになると、これらのサービスの提供を受ける市場国では、支店など物理的な拠点(事業所PE)や契約締結権限を有する者(代理人PE)がないため、源泉地国として外国企業の売上に課税できない弊害が生じました。そこで2012年、国際的な租税回避を防止し、公平な競争条件とする国際課税ルール策定のため、BEPSプロジェクトが開始しました。
BEPSプロジェクトでは、2つの取組みについてOECDの場で協議されています。
①PEが設置されていない市場国においても課税できるよう、企業の通常利益を売上の10%に設定し、それを超える残余利益の25%分を、それぞれの市場国に配分する。
②各国の法人税率を少なくとも最低15%以上として、法人税の引下げ競争に歯止めをかける。
世界の柔道が国際ルールになった現在においても、日本の柔道は講道館の創始者、嘉納治五郎の教えのもと、子供たちの心身を鍛え、世界レベルの選手を次々と育て、世界で主導的な立ち位置にいます。
OECD租税委員会では、国境を越えた取引において、企業の公平な競争環境の場を創ろうとしています。各国の利害が交錯する中で、日本は租税の国際ルール作りに主導的に関われるかが問われています。