リモートワークでの勤務が普及し、業種によってはフルリモートで居住地が会社の近くでなくとも問題ないというところも増えています。極端な話、海外在住者と雇用関係を結び国外に在住のまま働いてもらうこともできます。日本国内の採用市場ではこれまで絶対数が少なく人材難だった、英語ができるITエンジニアなどは、海外から人材を採用する方針も選択肢の一つとなっています。
話を単純化するため、前提として、リモートで日本勤務するITエンジニアは、これまで日本に住所も居所も持ったことがない日本の所得税法上の非居住者でかつ役員とはならない労働者とします。そして、勤務者は日本の会社への出社(=日本に来ること)は一切不要とし、給料は日本から海外の本人の銀行口座に直接支払われるものとします。さらに、勤務者の居住地国と日本との間には租税条約があり、給与所得者は居住地国でのみ課税されるものとします。
給与は日本から国外の本人口座に送金されますが、日本で勤務を行わないため国内源泉所得とはならず、給与の支払いの際の日本の所得税の源泉徴収は不要です。年末調整も対象外です。日本では課税されないため日本での確定申告も不要です。
課税関係の精算は勤務者本人の居住地国で確定申告をすることになります。
海外の人を海外在住のまま日本の企業が雇用することはまだ法整備がなく、今後変わる可能性はありますが、いまのところ、給与が日本の企業から支払われていれば、社会保険は適用されるものと考えられています。ただし、介護保険には日本での居住要件があるので加入できません。
労働保険は、労働災害保険のみ特別加入制度(海外派遣者)が適用できれば対象となれます。雇用保険は、海外在住の場合、現地採用と同じ扱いとなり雇用保険には加入できません。
今後、海外リモート勤務をする実例が増えてくると、法整備も後追いで対応されてくるものと思われます。適用の際は、専門家および年金事務所に相談の上、実態とその時点での法解釈に従った手続きが必要となります。