大手ドラッグストアチェーンの各店舗に、節電を理由として、暖房の使用を控えるようにとの「暖房禁止令」が出され、従業員や来店客から寒すぎると苦情が出ているとの報道がありました。
このドラッグストア本部は、店舗に「12月以降も暖房を原則使用しない」方針を通達したことを認め、改めて「臨機応変に対応するよう」周知したそうです。
同社は、春と秋の冷暖房使用を禁止しており、例年12月から暖房を使用開始していたものの、政府の節電要請を受けて、12月以降も暖房停止を継続したのが経緯のようです。なお、同様の暖房禁止令は、大手カラオケチェーンでも出されていたようです。
企業は、労働者に対して安全配慮義務が課されており、労働環境衛生を維持向上することが労働安全衛生法を中心とする法令で求められています。
職場の衛生基準については、厚生労働省令の「事務所衛生基準規則」に様々な項目が定められています。
例えば、事務所内の浮遊粉じん、空気中の一酸化炭素及び二酸化炭素、ホルムアルデヒドの上限濃度等が定められています。
また、事務所の照度は、一般的な事務作業で300ルクス以上と定められています。
トイレについても、男女別に人数に応じた便器・便室の数が定められています。
同規則4条で「室の気温が10度以下の場合は、暖房する等適当な温度調節の措置を講じなければならない」「冷房する場合は、外気温より著しく低くしてはならない」(衣類等での調整可)としています。
さらに、同5条で「空調設備を設置している場合は、18度以上28度以下及び相対湿度40%以上70%以下」とする努力義務が定められています。罰則はなく、冷暖房禁止自体が違法とは言えませんが、節電が過ぎて、温度・湿度を維持できなければ、法令違反を問われる可能性はあります。