春は新卒の入社や、転職、配置転換などで職場が変わることが多くあります。その際、転職者の出入りに伴う前職の重要データの持ち出しで、個人情報、営業秘密の漏洩などは重大な犯罪になることがあります。
営業秘密情報持ち出しはニュースでも取り上げられていますが、警視庁によると営業秘密侵害事件は22年には前年より6件多い29件で、統計を取り始めた13年以降で最も多かったといいます。
転職者が許可なく前職から持ち出した情報を転職先で活用するのは本人にも企業にもリスクが高いといえます。
不正競争防止法では企業が持つ秘密情報が不正に持ち出されるなどの被害にあった場合に、民事上・形事上の措置をとることができます。その秘密情報が、不正競争防止法上の「営業秘密」として管理されていることが重要です。
それには3つの要素があります。
①秘密管理性…営業秘密保有企業の秘密管理意思が秘密管理措置によって従業員等に対し明確に示しされ当該秘密管理意思に対する従業員等の認識可能性が確保される必要性
②有用性…当該情報自体が客観的に、事業活動に利用されていたり、利用されることによって、経費の節約、経営効率の改善に役立つものであること
③非公知性…保有者の管理下以外では一般に入手できないこと
最も問題視されるのは秘密管理性で、データにパスワードを設けたりアクセスを制限したりして一般情報と区別してあると該当する可能性が高くなります。
経済産業省が示す営業秘密管理指針を踏まえた定めが必要です。各企業の規模や秘密の内容に応じて適用範囲、情報の定義・分類、秘密保持義務、罰則等を定めます。
営業秘密以外でも前職で知った情報の持ち出しは問題です。多くの企業は就業規則や退職時の誓約書で職務上知り得た情報を外部に漏らさないよう禁じており、秘密保持義務は退職後にもあることになっています。違反すると損害賠償の請求になったり、刑事罰になったりする場合もあります。