A医師は個人で診療所を営んでいます。一緒に暮らしているお嬢さんはこの春医療系大学の2年生になり、Aさんの診療所で土曜日だけ受付の仕事を手伝うようになりました。医療の現場に早く触れてみたいという娘の希望を親が受け入れたためです。
アルバイトとしてその勤務の対価を支払うことにし、その金額は他のアルバイトの人たちの基準に合わせることにしました。果たしてこの給料はAさんの事業所得の必要経費とすることができるでしょうか?
所得税法の原則では、事業から同一生計親族(=1つの財布で生活費を賄っている親族)に対しての支払いは、対価の支払いがあった場合でもその事業の必要経費とはならないとされています。ただし、例外で、15歳以上で専ら(=従事可能期間の半分超勤務)青色申告者の事業に従事する者である場合には、所定の届出書の提出により、経費とすることができるとされています。
Aさんの場合は、年齢基準は満たしていますが、専ら従事という部分が該当しないため、お嬢さんに対する土曜日だけのアルバイト代は事業の経費とされません。一方の受け取ったお嬢さん側では給与収入としての課税はされません。渡したお金は家事費の支出扱いとされ、結局お小遣いを渡したのと同じ結果となります。
B歯科医は個人で歯科クリニックを営んでいます。2年前に歯科大を卒業したお嬢さんはいま大学病院に勤務し、自宅からの距離も考え1人でマンションを借りて生活しています。月に2回Bさんのクリニックで歯科医としてアルバイトをし、他のアルバイト歯科医と同水準で給与が支払われています。同居していないということで経費扱いにできるでしょうか?
別居=別生計なので所得税法の規定に引っかからず経費扱いにできる、ように見えます。しかしながら、実態も本当に別生計なのかということが判断基準となります。
Bさんは、大学病院勤務では安月給で生活が大変だろうという親心で、歯科医として別居もしている娘に月々の生活費の仕送りをしていました。こうした実態があると別生計とはいえず経費にはなりません。
経費となるか否かは事実認定も必要です。