BEPSプロジェクトは、国際的な租税回避と利益移転を防止する対応策として2つの柱を提示しました。第1の柱は、恒久的施設(PE)のない市場国にも海外からの音楽配信や書籍販売等からの収益について新たな課税権を配分するもの、第2の柱は、法人税率引下げ競争に歯止めをかけ、最低税率を15%以上とするものです。
第2の柱は、令和5年度税制改正で所得合算ルール(IIR)が先行して法制化されており、令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から施行されます。総収入金額が7億5,000万ユーロ(約1,200億円)以上の多国籍企業に適用され、軽課税国に所在する子会社の実効税率が15%を下回る場合、親会社に最低税率15%に至るまで上乗せ課税するものです。令和6年度税制改正では、制度の一部見直しが行われます。
なお、軽課税国に所在する親会社の実効税率が15%を下回る場合、子会社に最低税率15%に至るまで上乗せ課税する軽課税所得ルール(UTPR)及び、自国の事業体が最低税率15%に満たない場合、最低税率まで課税する国内ミニマム課税(QDMTT)については、令和7年度改正以降に法制化されます。
暗号資産等を利用する国際的な脱税や租税回避を防止するため、令和4年OECDで策定されたCARF(暗号資産等の取引や移転に関する自動的情報交換の報告枠組み)に基づき、非居住者の暗号資産等取引情報を各国の税務当局間で自動的に交換するための報告制度が新たに整備されます。暗号資産等にはビットコイン等だけでなく、トークン化された金融商品、NFTも含まれます。令和8年1月1日以後、暗号資産交換業者等との間で行われる非居住者の暗号資産等取引について、当該交換業者等から所轄税務署長に取引情報等の提出が義務付けられます。
富裕層のタックスヘイブン等を利用した課税逃れに対する国際的な批判の高まりから、平成27年度税制改正では、外国の金融機関等を利用した国際的な脱税や租税回避を防止するため、金融機関には非居住者の金融口座情報の提供を義務付け、各国の税務当局間で情報を自動的に交換する制度が導入されました。暗号資産等取引情報の報告制度創設にあわせ、金融口座情報においても電子マネー等を報告対象とする見直しが行われます。