上場株式の配当所得については、令和4年までは所得税と住民税の課税方式を選択できました。例えば所得税については総合課税として申告し、住民税については申告不要制度を選択する、といった具合です。このように申告方式を選択することにより、所得税は総合課税の場合利用できる配当控除を用いて実効税率を下げ、住民税は効率の悪い配当控除を使用せず分離課税の税率を適用する、といった節税が可能でした。
令和5年分の所得税申告(住民税については令和6年分)より、所得税と住民税の課税方式は一致させなければならなくなりました。
配当控除がすべて所得の10%で適用できるという前提で、課税所得695万円以下の所得税率20%までの場合、所得税・住民税の配当控除と税率を加味すると、配当所得を総合課税で申告した方が基本的には有利となりますが、以前はできていた住民税側の分離課税の税率が利用できないため、令和4年以前と比べるとお得になる割合は下がってしまいます。
特定口座源泉徴収ありで確定申告不要の配当所得の場合、そのままであれば国民健康保険料の計算に用いる所得として扱われませんが、申告をしてしまうと所得計算に入るため、結果として国民健康保険料の値上がり分で節税効果がなくなるばかりか、割高になってしまう可能性もあります。
上場株式等の譲渡損失との損益通算や、繰越控除がある場合などは分離課税で申告した方が有利な場合もありますが、申告不要の配当所得を申告すると総課税所得額へ加算されるため、配偶者控除や基礎控除額の算定に使用する本人の所得額に影響があるため注意が必要です。
その他、住宅ローン控除等で所得税が少ない場合、配当控除目当てで損得勘定をしていたのに実際には控除されるべき税金がない、といったことも考えられますし、申告するしないの選択は所得税率以外の要素も考慮しなければならないため注意が必要です。