令和4年11月25日、東京都労働委員会は料理配達「ウーバーイーツ」の運営会社などに対し、配達員の労働組合と団体交渉をするよう命じました。「ギグワーカー」を労働組合法上の労働者とする法的判断は国内初です。なお、ウーバー側はこれを不服として再審査の申し立てを検討しているとのことです。(日本経済新聞令和4年11月25日)
いわゆるフリーランス等「雇用関係によらない働き方」が増加しています。これらの働き方をする者は原則として各種労働法の保護を受けません。一方でこれら労働法の適用のないフリーランスの増加は世界的な傾向であり、各国で「雇用関係によらない働き方」をする者への法的保護が検討されるようになっています。
ギグワーカーとはフリーランスの一形態で、プラットフォーム事業者を介して仕事を受注し、実際のサービスは顧客との対面で行う者をいいます。
近年、原則として労働法の保護を受けないギグワーカー等のフリーランスに、憲法で保障される団体交渉の枠組みを活用して、企業側と交渉したいというケースが見られるようになりました。労働組合法上の労働者が集まった「労働組合」であれば、個々人の契約相手である企業は、その労働組合と団体交渉を誠実に行う義務(誠実団交義務)を負うことになります。つまり、企業が自社の契約相手はギグワーカー(フリーランス)であり、「自社の労働者ではない」と考えていても労働組合法上の労働者であると判断された場合には、企業は労働組合が申し出た団体交渉を誠実に行わなければならないことになります。
ただし、今回判断されたのはあくまでも労働組合法上の労働者であることのみであって、労働基準法や労働契約法上の労働者であるとまで判断されたわけではありません。よって企業は、労働基準法上の労働時間規制や割増賃金支払い義務、また労働契約法上の解雇制限や雇止めの禁止などの義務を直接的に負うことまでは求められていないことになります。