従業員は、会社(使用者)との間で締結した労働契約に基づき、「労働日に労働しなければならない」という義務を負っています。
したがって、民法の規定を杓子定規に当てはめると、仮に私傷病等の理由で、その義務を履行できない(労働日に労働できない)のであれば、会社は、債務不履行を理由として契約の解除の意思表示、つまり、解雇が検討されるべきとなります。
とはいえ、正社員を中心とする、長期雇用システムを前提とした我が国では、私傷病等を理由に従業員が一定期間会社を休むことがあったとしても、直ちに解雇を検討するのではなく、従業員が安心して療養に専念し、復職を果たす機会を与えることが、社会的な慣習として求められています。その意味で、休職制度は法律による明文はないものの、従業員の解雇を猶予するための役割を持っているといえます。なお、「休職制度」は私傷病(業務外)の傷病を前提とする制度なので、業務上(長時間労働やハラスメントを起因とするものを含む)の傷病に関してはこれと区別する必要があります。
前述したように「休職制度」は、法律上の明文はありませんので、「休職期間」については、基本的に会社ごとに定めることができます。具体的にどのように定めるかは、その会社における「休職制度の目的」や「人員の余裕度合い」などを勘案して決めます。
人員に余裕がある場合には、雇用の保証を目的として長期の期間、人員に余裕がない場合には、解雇回避の努力義務として、比較的に短期間となるでしょう。
従業員は、休職期間中は、労働しなければならない義務が免除されていることから、「ノーワーク・ノーペイ」に則り、無給となるのが原則ですが、会社が休職期間中であっても、一部又は全部の給料を支給することは可能です。ただし、労働義務が免除され、さらに給料が支払われることになれば、当該従業員の復職への意欲が薄れる可能性も否定できません。
休職期間満了を解雇事由とすると、解雇の相当性(労働契約法16条)が問われることから、休職期間満了を退職事由とするケースが多く見られます。