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AI時代を生き抜く 理解・知識・環境の三本柱

広がる「シャドーAI」

 最近よく耳にする「シャドーAI」という言葉をご存じでしょうか。これは、会社の正式な承認を得ないまま従業員がAIツールを使ってしまうことを指します。調査によれば、従業員の7割以上が生成AIを使い、禁止されても半数近くは「それでも使う」と答えているそうです。便利さに惹かれ、「とにかく試してみたい」という気持ちが先に立ってしまうのは理解できるところです。

見過ごせないリスク

 しかし、その裏には見過ごせないリスクも潜んでいます。実際に大手企業では、エンジニアが対話型AIに機密コードを入力し、外部に流出してしまった事例も報告されています。また、生成AIの誤情報に振り回されれば、判断を誤る危険もあります。ちょっとした油断が大きな損失につながるかもしれないのです。

背景にある2つの要因

 このような状況の背景には2つの要因があります。ひとつは、経営層を含め企業全体のAIに対する理解不足。日本のAI利用率は世界平均を大きく下回っており、経営陣の慎重な姿勢と現場のニーズの間にギャップがあります。もうひとつは従業員側の知識不足です。「機密情報を入力しない」「結果を鵜呑みにせず確認する」といった基本的なルールが徹底されていません。特にデジタルに慣れた若い世代には、明確な指針や教育の機会を与えることが欠かせません。

解決のカギは「安全な環境」

 そして、解決のカギは「安全な環境を用意すること」にあります。

 ChatGPT EnterpriseやMicrosoft 365 Copilotなど法人向けAIは、学習にデータを使わず、高度なセキュリティ機能を備えています。こうしたツールを企業が導入し「安心して使える場」を整えることで、未承認での利用は自然と減り、生産性向上の正式な手段へと変わっていくでしょう。

AIは経営のパートナーへ

 リスクを恐れて利用を避けるのではなく、企業理解・教育・環境整備を通じて活用を正しい軌道に乗せることが重要です。AIは一過性の流行ではなく、今後の経営を支える戦略的パートナーとなり得ます。企業が主体的にその関係を築けるかどうかが、競争優位を左右するでしょう。

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