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2025年中小企業白書を読み解く 中小企業の統治改革

経営の持続可能性を高める視点

 近年、外部環境の急速な変化や事業承継の課題を背景に、中小企業にも「ガバナンス体制」の構築が求められています。白書によれば、経営の透明性と説明責任を確保し、持続的な成長を支えるには、経営者単独による属人的な判断から脱却し、外部の視点を取り入れることが重要とされています。特に承継予定のない企業や規模拡大を目指す企業では、経営体制の未整備が意思決定の偏りや業務の不備につながるリスクを抱えている実態が浮かび上がっています。

社外の視点がもたらす信頼と機能強化

 外部人材を経営判断に関与させることが、監督・助言機能の強化に直結すると明記されています。たとえば、社外取締役や中小企業診断士などの外部者が経営に関わることで、意思決定の妥当性が高まり、対外的な信用力の向上にもつながります。実際に、こうした体制を取り入れている企業では、金融機関との信頼関係の深化や、内部統制の整備といった副次的な効果も確認されており、経営課題の可視化や意思決定の客観性を担保する基盤として機能しています。

属人経営から脱し、仕組みを整える

 ガバナンス体制は大企業向けの制度ではなく、中小企業こそ柔軟に設計すべきものであると白書は指摘します。たとえば、社長以外の幹部を交えた経営会議の定例化や、議事録作成による意思決定プロセスの可視化、経理体制や支出の権限分掌の明文化といった、実行可能な工夫が多数紹介されています。経営を属人化させないことは、事業の継続性だけでなく、従業員の信頼形成や業務の平準化にもつながるため、企業規模を問わず早期の取り組みが望まれます。

自社に合った統治のかたちを見つける

 ガバナンスに「これが正解」という型はなく、企業の成長段階や経営課題に応じた柔軟な導入が重要だという点です。たとえば、数名規模の事業者であっても、顧問税理士との経営相談や、補助金申請時の第三者確認書の取得など、外部者との対話を制度として組み込むことは十分に可能です。自社の経営体制を一度見直し、「誰が何を決め、どう責任を持つのか」を明文化することで、信頼される経営へと第一歩を踏み出すことができるのです。

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