デイリーニュース

譲渡制限付株式報酬の会計・税務

増えている「譲渡制限付株式報酬」

 上場会社では、「コーポレートガバナンス・コード」(2015年)の施行後、株式報酬制度を導入する会社が年々増加しています。

 経団連の資料によると、2023年10月時点で、全上場企業(約3,900社)の約6割が株式報酬制度を導入しており、そのうち約1,400社が「譲渡制限付株式報酬」を利用しているそうです。「譲渡制限付株式報酬」とは、一定期間(対象勤務期間)の譲渡制限が付された株式(RS:リストリクテッド・ストック)を付与するものをいいます。

会計処理は費用を一定期間で按分計上

 事前交付型の場合、発行法人は、株式交付時の株価(公正な評価額)を譲渡制限期間にわたり、「株式報酬費用」を期間按分して費用計上します。付与時は、役員等の個人に金銭報酬を与え、それを現物出資させて株式(RS)を交付する形を取ります。

<交付時・公正な価額120の場合>

(前払費用)120 (報酬債務)120

(報酬債務)120 (資本金等)120

 例えば、3月決算法人で譲渡制限期間がX1.7~X2.6ならば、2期(X1・X2)にわたり、前払費用を費用に振り替えていきます。

<譲渡制限期間の会計処理>

X1(株式報酬費用)90(前払費用)90

X2(株式報酬費用)30(前払費用)30

税務は譲渡制限解除日に給与等として認識

 税務では、特定譲渡制限付株式に該当するRSについては、個人(役員等)側で譲渡が可能となる日に給与等と認識されるため、発行法人側は、その譲渡制限の解除があった日(X2.6.30)の属する事業年度(X2)において、給与等として認識します。

<譲渡制限解除があった年度の税務処理>

X2(役員給与等)120(前払費用)120

届出不要となる事前確定届出給与を検討

 役員に支給する場合には、事前確定届出給与等に該当しないと、発行法人側は損金算入できません。ただし、株主総会等の決議日から1か月を経過する日までに特定譲渡制限付株式を交付する定めがある場合、「届出が不要となる事前確定届出給与」に該当しますので、検討しましょう。

<届出不要となるスケジュール例>

・株主総会決議日 X1・6・30

(職務執行開始日 X1・6・30)

・特定譲渡制限付株式交付 X1・7・28

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