役員の過労死に労災認定
2025年6月11日の朝日新聞によると、2017年5月に急性心筋梗塞で死亡した千葉県内の建設会社の専務取締役(66歳男性)について、2018年9月に労働基準監督署が労災認定していたことが判明しました。
死亡した役員は、週休1日で主に現場監督として勤務し、死亡する直近2~6月の時間外労働は月平均100時間を超え、「過労死認定ライン」の複数月平均80時間を超えていたとして、労災が認められました。
一般に、役員の過労死による労災認定は困難とされていますが、死亡した役員が会社に提出していた「出勤簿」から労働時間の裏付けが取れ、同僚や部下からも証言が得られたことが大きかったようです。
なぜ役員に労働者性が認められたのか?
役員は使用者とされ労災給付に不可欠な労働者性が認められないことが多いのですが、本件では工事の受注や人員配置などを決定する「業務執行権」が代表取締役にあって、死亡した役員にはなく、実質的には代表取締役の指揮命令を受けて働く労働者に過ぎなかったと判断され、労働者性が認められました。
なお、死亡した役員の遺族は会社と代表取締役に対して損害賠償請求訴訟を提起し、2024年に和解が成立しています。
労災保険料を納めていなかったら?
役員は一般の労働者を対象とする通常の労災保険には加入できず、規模や業種によって加入できる特別加入をしない限り、原則として労災保険の対象とはなりません。
特別加入して保険料を納付していれば問題はないので、本件の場合、特別加入していなかったと思われます。
なお、会社が労災保険料を未納であったとしても、労災給付の申請は可能です。
もし、労災保険料を納めておらず、特別加入もしていなければ、保険給付額の最大40%が費用徴収として請求されます。
さらに行政等から指導を受けていたにもかかわらず労災保険加入漏れとなっていた場合は、保険給付額の全額が会社に請求されることになります。役員だから労災保険は関係ないとは一概に言えません。