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中小企業白書を読み解く 雇用維持のための対策を

共通課題としての人材確保

 2025年版中小企業白書によると、全国17,848者の中小企業・小規模事業者を対象とした帝国データバンクの調査において、「人材確保」が最重要課題として挙げられた割合が最も高い結果となりました。中規模企業では「省力化・生産性向上」、小規模事業者では「事業承継」がそれに続きますが、いずれにせよ人材の確保・活用が経営基盤の安定に直結することは明白です。業種・企業規模を問わず、雇用を取り巻く環境が厳しさを増している現状が浮き彫りとなりました。

従業員不足の構造的背景

 同白書では、従業員数の「過不足率」に関する景況調査も示されており、特に中規模企業で人材の「不足感」が強く、建設業においてはその傾向が顕著です。これは一過性の現象ではなく、労働人口の減少や業種ごとの働き手確保の難しさなど、構造的な課題が背景にあると分析されます。このような中で、採用戦略の見直しや職場環境の改善を通じて、いかに「選ばれる企業」になるかが問われています。

実務で意識すべきポイント

 人材不足への対応としては、単に採用枠を増やすのではなく、定着率向上に向けた工夫が求められます。

 例えば、短時間勤務制度やリモートワーク制度の導入による柔軟な働き方の提供、資格取得支援などキャリア形成への投資、職場内コミュニケーションの活性化などが挙げられます。加えて、DXや省力化設備の導入を通じて限られた人材で最大限の生産性を確保する施策も有効です。助成金制度の活用や、社会保険労務士との連携による就業規則の整備も併せて検討したいところです。

次世代に向けた布石を

 少子化が進む現代において人材の確保は今後ますます難易度が増すと予想されます。事業承継と絡めた「次世代人材」の育成、外国人材や高齢者の戦力化、業務の見直しによる人手依存からの脱却など、中長期的視点を持った戦略が必要です。労働市場の変化を的確に捉え、外部支援を活用しながら、自社に適した雇用維持・拡大施策を構築することが、これからの中小企業経営における生存戦略の鍵となります。

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