政策金利引上げとその実感
2024年度、日本銀行はマイナス金利を解除し、政策金利を段階的に引き上げました。これにより、中小企業の借入金利水準は直近で前回の利上げ水準に並び、多くの企業が金利の上昇を実感しています。借入金利水準判断の数値も上昇し、大企業・中小企業共に利払い負担が増しています。特に、宿泊業・飲食業など借入れ依存度の高い業種では影響が大きく、支払利息の増加は経常利益の圧迫要因となっています。
円安と物価上昇の継続
2024年度も歴史的な円安基調が続き、輸入物価は高止まりしています。特に従業員規模の小さい企業では、輸入比率が輸出比率を大きく上回っており、円安による仕入れコストの増大が経営を直撃しています。また、消費者物価指数や企業物価指数の上昇により、原材料やエネルギーコストも上昇しています。今後の購買計画や価格戦略においても、為替リスクを加味した柔軟な対応が求められます。
利上げが収益を押し上げる可能性も
中小企業庁は、政策金利が段階的に1.0%まで上昇するシナリオで経常利益の推計を実施。その結果、インフレ下で価格転嫁が可能な状況では、限界利益の増加が人件費や利払いのコスト上昇を上回り、収益向上につながるケースもあると示されています。特に、製品やサービスの価格改定を積極的に行える業種では、金利上昇局面を成長機会に転換できる可能性があります。価格交渉力を高めるためにも、差別化された付加価値提供が重要です。
経営者に求められる対応
今後の経営戦略として、単なるコストカットではなく、価格改定・生産性向上・新規投資の3点を同時に進めることが鍵となります。業種・地域別に物価上昇や円安の影響度を見極めた上で、サプライチェーンの見直しや調達先の多様化、金融機関との金利交渉も不可欠です。また、補助金や税制措置を活用して資金負担の平準化を図ることも検討すべきでしょう。社内では原価管理体制を強化し、経理部門と連携して収支見通しを柔軟にアップデートすることが重要です