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中小企業白書を読み解く 業況回復と停滞、データが示す足踏み

コロナ後の急回復と現状の足踏み

 2020年に新型コロナウイルス感染症の影響で大きく落ち込んだ中小企業の業況は、2023年第2四半期において1994年以降最高水準を記録するまでに回復しました。これは「中小企業景況調査」の業況判断DIの動きに明確に表れており、建設業からサービス業まで広範な業種で改善が見られました。しかし、2024年に入ってからは、回復傾向が鈍化し、多くの業種で業況判断DIが足踏みの様相を呈しています。急回復から安定期に入りつつある一方で、外部環境の変化により不透明感が高まっていることが背景にあります。

売上高は増加継続、利益には課題も

 財務省の「法人企業統計調査」によれば、売上高は2022年第1四半期を底にして増加傾向が続いていますが、その増加幅は縮小傾向にあります。特に中小企業における経常利益の伸びは、大企業との比較で見劣りし、その差が広がってきているのが実情です。加えて業種によっても差が顕著で、建設業などは上昇傾向で推移している一方、宿泊業や飲食サービス業はスケールダウンにより、厳しい状況が続いています。単なる回復ではなく、構造的な改善を図る必要性が見えてきています。

価格転嫁力の差が生む格差

 業績における格差の背景には、価格転嫁力の違いがあります。エネルギー価格や原材料費の高騰を受け、それらを価格に反映できる企業は売上・利益を確保できていますが、そうでない企業は利益を圧迫されています。顧客との関係性や市場競争力によって価格設定の柔軟性が異なるため、利益率にも大きな差が生まれています。特に価格競争が激しい小売業や飲食業では、厳しい交渉環境の中で転嫁が難しく、経営改善の足かせとなっています。

経営判断の見直しと支援活用の必要性

 こうした状況を踏まえれば、単なる売上拡大戦略だけでなく、利益確保に向けたコスト構造の見直しや付加価値の高い商品・サービスの開発が急務です。国や自治体が実施する補助金制度、たとえば「省エネ補助金」や「新事業創出補助金」などを活用し、生産性向上や業態転換を図ることが今後の経営安定の鍵となります。足踏み状態にある今こそ、支援制度を有効に活用し、自社の強みを伸ばす戦略的な投資判断が求められます。

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