会社で「横領」が発覚した場合
あまり考えたくはありませんが、会社内で「横領」が発生することがあります。そのようなときは、資金繰りや被害拡大の防止に配慮しつつ、事実関係の調査と証拠の保全を進めることになります。感情はさておき、被害額が確定できたら、会社のために取り得る行動(懲戒処分・損害賠償・刑事告訴等)を決めなければなりません。
税務では3つの学説があります
民法では、不法行為に基づく損害賠償請求権は「被害者が損害と加害者を知った時」に生ずるとされています。これに関連して、税務では、よく、横領損失と賠償請求権(収入)の計上時期が論じられます。
⑴ 同時両建説
この説では、横領(不法行為)による現実的な損失が発生しているため、損失を認識するとともに、法律上、損失を知った者は加害者に対して損害賠償権が発生するため、収入に計上するという考え方になります。
| 横領損失 | 損害を知った事業年度 |
| 賠償収入 | 損害を知った事業年度 |
⑵ 異時両建説
この説では、損失の認識は、⑴と同じ立場を取りますが、法律上、抽象的な債権は生じていても、具体的に確定したものではないことから、賠償額の同意、判決の確定、和解の成立などの時点を請求権の実現(確定)したものとして収入を認識し、損失の計上時期とは別々に考えます。
| 横領損失 | 損害を知った事業年度 |
| 賠償収入 | 具体的な請求権が確定した事業年度 |
⑶ 損失確定説
この説は、損害を知った時に直ちに損益を認識することはせず、請求権の行使ができるか見極めた上で、正味(ネット)の損失額の確定時点に損失を認識するという考え方です(損失と収入を同時に認識するのは⑴と同じですが、賠償請求が確定するまで、計上のタイミングが遅くなります。)
通達では「他の者」の場合は「異時両建」
このような横領(不法行為)は秘密裏に行われた場合など加害者や権利内容を知ることが困難なことが多いため、通達では、不法行為の相手方が「他の者」である場合には、「異時両建説」を認めています。ただ、会社役員や従業員の不法行為の場合は明記がないため、ケース・バイ・ケースであり、実務上は悩ましいところになっています。