成長意欲はあるが進まない現実
2025年版中小企業白書によれば、多くの中小企業が「売上拡大」や「利益増加」を経営方針に掲げている一方で、実際にスケールアップを実現している企業はごく一部にとどまっています。例えば、従業員数が30人未満から100人以上へ拡大した企業は、10年間でわずか1割程度。多くの事業者は意欲を持ちながらも、成長に必要な条件や環境整備が不足しているのが現実です。成長の「意志」はあっても、「実現」に結びつかない状況には、明確な理由があります。
リスクと不確実性への不安
スケールアップを妨げる要因として最も大きいのが、リスクへの懸念です。人件費や原材料費などのコスト増に加え、需要変動や外部環境の不確実性が投資の足かせとなっています。とりわけ中小企業にとっては、ひとたびの失敗が資金繰りを直撃する可能性があるため、慎重な姿勢を取らざるを得ません。白書では「設備投資を控える理由」として、「今後の需要が読めない」「先行投資が不安」という声が目立っており、こうした不安をどう取り除くかが鍵となります。
人材確保という最大のボトルネック
成長に欠かせないのが人材ですが、ここにも大きな課題があります。白書では、従業員数が増えない企業では「業務負担の増加」「スキル不足」といった問題が慢性化しており、人手が足りずに事業拡大ができないという声が多く見られました。特に若手人材の採用・定着には課題が山積しており、働き方改革や待遇改善、職場環境の整備を通じて、持続的な人材戦略を構築することが急務となっています。
外部連携と支援活用が突破口に
こうした課題に対し、白書では「支援機関や金融機関との連携」「異業種ネットワークの活用」など、外部リソースを活かす戦略が有効であるとしています。実際、成長企業の多くは支援機関を積極的に活用しており、経営課題の可視化や資金調達の改善につながっている例が紹介されています。
自社だけで解決しようとせず、外部の知見や制度を取り込むことで、スケールアップの可能性は格段に広がるのです。