ChatGPTに代表される生成AIは著しい技術進歩を経て、現状でも多岐にわたる業務への活用が可能です。例えば、会議資料や議事録の作成などの一般的な業務のほか、キャッチコピーやアイデア出し等のクリエイティブ業務等幅広く活用が可能です。
一方で、生成AIには、企業秘密や個人情報の漏洩、知的財産権の侵害などの懸念も生じることから、業務利用を制限する企業も存在します。いずれにしても、これらの新技術については、便利さとリスクの双方を理解し、業務に活用することが求められます。
生成AIの業務利用で問題が生じ得るのは、その性質上①利用者が生成AIに何らかのデータ(プロンプト)を入力する場面と②生成AIが作成した生成物を利用する場面との2つの場面が考えられます。
①利用者がプロンプトを入力する場面
(ア)企業秘密が漏洩するリスク
生成AIの中には、利用者が入力したプロンプトを学習に利用するものがあり、例えば、利用者が何らかの自社の情報をプロンプトとして入力した場合、生成AIは、そのプロンプトを学習して、他の利用者への回答にすることがあり得ます。この特徴を通じて、企業秘密が外部に漏洩するリスクが起こり得ます。
(イ)個人情報が漏洩するリスク
個人情報を含むプロンプトを入力すると、(ア)と同じく当該プロンプトが学習に利用され、生成物を通じて、個人情報が第三者に漏洩するリスクが起こり得ます。
②生成AIの生成物を利用する場面
この場面でのリスクついては、生成AIの生成物に対する著作権リスクが考えられます。著作権法上の著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの」とされており、生成AIが自動的に生成した生成物については、現状、著作権法上の権利の対象とはならない(著作物ではない)とされています。したがって、現時点においては、生成AIを業務に利用するにあたり、生成物が著作権法によって保護されないリスクがあることを前提に利用する必要があります。