1年以上の予定での海外転勤となると、居住している自治体に転出届を提出します。転出先として国外の住所を記載するので国外転出届となります。この届出により、国内に住所はなくなります。国内に住所がなくなることで、住所を基に課される税金や保険・年金の扱いも変わってきます。
国内に住所がなくなると、所得税法上の納税義務者区分は、非居住者となります。
給与以外の所得がなければ、日本での所得税の課税はなく、勤務先国での税法に従った課税となります(駐在期間中の自宅を他人用の賃貸に出すなど、給与以外の日本国内源泉所得がある場合は、日本での確定申告が必要となることもあります)。
個人住民税は、その年の1月1日時点で市町村(都道府県)に住所がある者に対して課税されます。そのため、住所がなくなった翌年からは、帰国して住所を持つこととなるまで、住民税は課されないことになります。
赴任前の国内会社から継続して国内払い給与があれば、海外赴任中も各種社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険など)の被保険者資格は継続となります。厚生年金につき、赴任先国と日本との間で年金協定があれば、2つの国での二重払いを回避できます。
健康保険が継続していると、海外赴任中に急な病気やけがなどによりやむを得ず現地の医療機関で診療等を受けた場合に、申請により一部医療費の払い戻しを受けられる海外療養費制度が使えます。
一方、雇用主が駐在先の現地法人となる場合には、現在の日本での被保険者資格を喪失することになります。その場合は厚生年金から国民年金への切り替えや健康保険の任意継続などの手続きが必要となります。
国民年金は、日本国籍者であれば、海外居住でも任意加入できます。国民年金に任意加入する目的としては、年金をもらう条件として必要な加入期間を充足させることと将来もらえる年金額を減らさないためなどです。なお、海外在住者に国民健康保険の任意加入制度はありません。