法人の役員賞与を損金算入できるようにするには、事前確定届出をしておく必要があります。事前確定届出についての法律の規定には、「その役員の職務」「所定の時期」「確定した額の金銭」との文言があり、「政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしていること」と定められています。
政令には、株主総会での決議が必要なこと、届出期限は職務の執行の開始の日から1月を経過する日であること、届出の書類は省令で規定するものに拠ることと規定されています。省令の規定による記載事項によると、「事前確定届出給与の支給時期並びに各支給時期における支給額」を書くこととされており、複数回の支給が予定されている文言になっています。
もし、役員賞与(事前確定届出給与)の支給を最も早いタイミングで1回だけ実行しようとするとしたら、事前確定届出が前提なので、定時株主総会終了後に職務執行期間が開始したら直ぐ税務署への届出を済ませ、その届出書の提出を確認してから事前確定届出給与の支払いをする、という段取りになるので、株主総会後一週間以内の日を「支給時期」とすることが可能です。
しかし、規定の文理からだけでそれを了と言えたとしても、立法の趣旨は、役員の委任された職務の執行の対価としての役員賞与の支払いなので、1回だけの支給だとしたら、職務執行期間終了後、即ち1年後の支払いとするのが筋です。
ところが、税務行政サイドにはこの趣旨解釈に傾く気配がありません。先の文理解釈すら容認しそうです。質疑応答事例では、3月決算5月申告法人が6月の賞与支給時期に事前確定届出賞与の支払いをすることを了としています。
また、別な質疑応答事例では、定時株主総会が6月終盤で、支給時期が12月と翌年6月で、実際に届出通りに賞与の支給がなされたのは12月だけだったとしても、12月支給分については損金算入、6月支給分だけ損金不算入の取扱いとしています。拘っているのは、届出額と支給額の一致だけのように見えます。