特定口座とは、申告分離課税が適用となる上場株式等や投資信託にかかる譲渡益の計算等を証券会社が行ってくれるものです。特定口座には、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」があります。「源泉徴収あり」を選択すると、証言会社が譲渡益にかかる所得税及び住民税を徴収してくれるため、原則その口座の譲渡益を確定申告する必要はありません。
ただし「確定申告が不要」であっても、確定申告をすることも可能です。例えば譲渡損が出てしまった場合に他の取引口座との損益通算や、翌年以降に繰越控除を行いたい場合は、確定申告を行うことで特定口座の損失が活用できます。他にも譲渡益をふるさと納税に利用したい、住宅ローン控除額が余っているので利用したい、といった場合にも確定申告を行う必要があります。
特定口座源泉徴収ありで保有していた株式でも、申告しなければならないケースが存在します。TOB(株式公開買付)成立後、上場廃止となった後で株式を買付者などに買い取られた際に譲渡益が生じた場合は、所得税の申告が必要になります。
これはTOB成立後、上場廃止となった株式については、買付者との取引は証券会社を通さない相対取引となるため、特定口座内で損益の計算がされなくなるからです。また、上場廃止後は他の上場株式の譲渡所得との損益通算や繰越控除ができない点にも注意が必要です。
国税庁は報道発表資料として、「サンプル的に調査等を行った」ことを明らかにしています。それによると、調査等件数379件に対して申告漏れ等の非違件数は199件となっています。報道では「特定口座で株を保有していたので、てっきり税金の清算が済んでいるものだと思っていた」と誤認していた方のコメントを紹介しています。
公開買付については公告がされるものですから、株式投資を行っている方は、こまめな情報収集を行い、上場廃止前に売却するか、廃止後の利益は忘れずに申告を行うかして、申告漏れを回避しましょう。